障害福祉事業者が知るべき意思決定支援の本質とは?ご本人の「自分らしい選択」を支えるために

投稿:2025年12月20日更新:2025年9月8日コラム , 障害者福祉

障害福祉サービス事業を運営する上で、利用者の方一人ひとりの思いを尊重し、その人らしい生活を支えることは最も大切な基本です。その核となるのが「意思決定支援」です。これは、利用者の方がご自身の生活に関わることを自分で決められるようにサポートする一連の取り組みのことで、障害者総合支援法でも事業者に求められる重要な役割とされています。 この記事では、厚生労働省が示している「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」に基づき、事業者が押さえておくべき意思決定支援の基本的な考え方と具体的な進め方を分かりやすく解説します。

なぜ「意思決定支援」が重要なのか

サービスの提供において、意思決定支援は単なる努力目標ではなく、法律でその実施が求められている重要な取り組みです。 なぜなら、障害のある方が「どこで、誰と、どのように暮らすか」をご自身で選択できる機会を確保することが、共生社会の実現に向けた基本理念とされているからです。 事業者として適切な意思決定支援を行うことは、法令遵守(コンプライアンス)の観点はもちろん、利用者の方との信頼関係を築き、質の高いサービスを提供するための土台となります。ご本人の意思が尊重されることで、日々の生活への満足感や自己肯定感が高まり、より豊かな暮らしにつながっていくのです。

意思決定支援の具体的な進め方【ガイドラインの4ステップ】

意思決定支援は、思いつきや個々の職員の頑張りだけで行うものではなく、事業所として仕組みを整え、計画的に進めることが大切です。ガイドラインでは、そのための標準的な枠組みが示されています。 ここでは、その中心となる4つのステップをご紹介します。

ステップ1:責任者を決める(意思決定支援責任者の配置)

まず、事業所内で意思決定支援の中心的な役割を担う「意思決定支援責任者」を定めます。 この責任者は、支援全体の計画を立てたり、後述する会議を運営したりする役割を担います。 多くの場合、サービスの全体像を把握しているサービス管理責任者や相談支援専門員が兼務することが想定されています。

ステップ2:関係者で話し合う(意思決定支援会議の開催)

次に、ご本人に参加していただいた上で、ご家族や職員、成年後見人など、ご本人をよく知る関係者が集まって話し合う「意思決定支援会議」を開催します。 この会議では、日々の生活の様子やご本人の好み、これまでの人生で大切にしてきたことなどの情報を共有し、ご本人の意思を確認したり、推定したりします。 この会議は、既存の「サービス担当者会議」や「個別支援会議」と一体的に実施することも可能です。

ステップ3:計画に落とし込み、実行する

会議で確認・推定されたご本人の意思を、サービス等利用計画や個別支援計画に具体的に反映させます。 例えば、「静かな環境で創作活動を楽しみたい」という意思が推定された場合、それを実現するためのプログラムを計画に盛り込み、サービスとして提供します。 計画に明記することで、職員全員が共通の認識を持って、一貫した支援を行うことができます。

ステップ4:振り返り、改善する(モニタリングと評価)

計画に基づいて支援を実行した後は、必ずその結果を振り返ります。 ご本人の表情や様子の変化などを観察し(モニタリング)、支援がご本人の望む生活につながっているかを評価します。 そして、その評価をもとに計画を見直し、より良い支援へと改善していくのです。 このPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を繰り返すことが、意思決定支援の質を高めていく上で不可欠です。

支援を行う上で大切にしたい3つの原則

意思決定支援の仕組みを整えると同時に、支援者一人ひとりが大切にすべき基本的な姿勢があります。特に、ご本人の意思を確認することが難しい場合には、以下の原則に立ち返ることが求められます。

まとめ

意思決定支援は、障害のある方の尊厳と権利を守り、その人らしい生活を実現するために不可欠な取り組みです。それは、日々のコミュニケーションの積み重ねであると同時に、ガイドラインに沿った計画的な仕組みづくりが求められます。事業所の理念を利用者本位のものとし、それを具体的なサービスに結びつけていくためにも、改めて事業所内の体制を見直してみてはいかがでしょうか。意思決定支援の仕組みづくりや、それに伴う計画書の作成などでお困りのことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

東京都杉並区の阿佐ヶ谷で活動している行政書士です。
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