「障害のある方を雇用したいけれど、何から始めればいいかわからない」「採用後の環境整備やコスト面が不安で、一歩が踏み出せない」。こうしたお悩みをお持ちの事業主様は少なくありません。障害者雇用は、法律で定められた企業の義務という側面だけでなく、人手不足の解消や組織の活性化につながる大きな可能性を秘めています。そして、その一歩を力強く後押しするために、国や東京都は非常に手厚い支援制度を用意しています。この記事では、障害者雇用に伴う経済的な負担を軽減し、むしろ企業の成長を促す「戦略的投資」に変えるための助成金活用術について、分かりやすく解説します。
障害者雇用は、助成金を活用すれば怖くない
障害者雇用を進める上での最大の懸念は、やはり経済的な負担や、専門的なノウハウがないことへの不安ではないでしょうか。しかし、その心配は無用です。なぜなら、国や自治体は、企業が直面するであろう様々な課題を想定し、採用から職場定着、さらにはキャリアアップまで、各段階に応じたきめ細やかな助成金制度を設けているからです。これらの制度は、単なるコスト補填ではありません。障害のある方がその能力を最大限に発揮できる環境を整え、企業全体の生産性向上につなげることを目的として設計されています。つまり、助成金を戦略的に活用することは、法定雇用率の達成という守りの一手にとどまらず、多様な人材が活躍できる強い組織を作るための「攻めの一手」となり得るのです。
【ステップ別】まずはここから!基本となる国の主要助成金
数ある助成金の中から、まずは基本となる国の制度を3つのステップに分けてご紹介します。これらを組み合わせることで、採用から定着までの流れをスムーズにサポートできます。
ステップ1:雇い入れのハードルを下げる【特定求職者雇用開発助成金】
これは、ハローワーク等の紹介を通じて、障害のある方など就職が難しい方を継続して雇用する際に、賃金の一部を助成する制度です。採用時の初期コストに対する不安を和らげ、企業が新たな一歩を踏み出すための強力な味方となります。助成額は、障害の程度や労働時間によって異なりますが、例えば重度の障害のある方を中小企業が雇用した場合、最大で240万円が3年間にわたって支給されるなど、非常に手厚い内容になっています。
ステップ2:安定した雇用を後押しする【キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)】
パートタイマーなどの有期雇用の従業員を、正規雇用の社員へと転換する際に支給される助成金です。障害のある方の雇用の安定とキャリア形成を目的としており、企業の持続的な人材確保を支援します。例えば、精神障害のある有期雇用の方を正規雇用に転換した場合、中小企業であれば1人あたり120万円が支給されます。雇用の「入口」だけでなく、その後の「定着」と「質の向上」まで見据えた制度です。
ステップ3:働きやすい職場環境をつくるための多様な支援
安心して長く働き続けてもらうためには、職場環境の整備が欠かせません。国は、そのための具体的な支援策も豊富に用意しています。
- 障害者介助等助成金: 業務をサポートする介助者や、手話通訳者を配置する際の費用を助成します。
- 障害者作業施設設置等助成金: 車いす用のスロープ設置やトイレの改修など、物理的なバリアフリー化にかかる費用を助成します。
- 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援: 専門家であるジョブコーチが職場を訪問し、ご本人への支援はもちろん、上司や同僚への関わり方についてもアドバイスを行います。この支援にかかる費用も助成の対象です。
【杉並区の事業主様へ】東京都ならではの手厚い上乗せ支援も活用しましょう
国の制度に加えて、東京都、特に私たち杉並区の事業主様が活用できる独自の支援制度も非常に充実しています。これらを組み合わせることで、さらに手厚いサポートを受けることが可能です。
代表的なものが「東京都障害者安定雇用奨励金」です。これは、国の「特定求職者雇用開発助成金」を受給した企業を対象に、東京都がさらに上乗せして奨励金を支給する制度です。特に、障害のある方の処遇改善を重視しており、昇給制度や通院のための有給休暇制度などを設けている場合に支給されます。国の制度と連携し、雇用の「量」だけでなく「質」の向上を目指す、先進的な取り組みと言えるでしょう。
また、国の助成金の支給期間が終わった後も、継続して雇用を続ける中小企業を支える「東京都中小企業障害者雇用支援助成金」もあります。これにより、最大で6年間という長期にわたる経済的支援が見込めるため、安心して長期的な雇用計画を立てることができます。
まとめ
障害者雇用は、決して難しいことばかりではありません。ご紹介したように、国や東京都が提供する多岐にわたる助成金制度を戦略的に組み合わせることで、企業の経済的・心理的な負担は大幅に軽減できます。大切なのは、これらの制度を単なるコスト補填として捉えるのではなく、多様な人材が活躍できる強い組織をつくるための「未来への投資」と考えることです。業務プロセスの見直しや、誰もが働きやすい職場環境の構築は、結果として企業全体の生産性を向上させ、新たな価値を生み出すきっかけとなるはずです。
「自社の場合、どの助成金が使えるのだろうか」「申請手続きが複雑そうで不安だ」。そのような疑問やお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。障害福祉サービスを専門とする行政書士として、それぞれの企業様の状況に合わせた最適な制度の活用法をご提案し、障害者雇用という新たな一歩を全力でサポートいたします。





